建設業許可業者となる利点
建設業は、軽微な工事であれば許可を受けなくとも受注することができますので、建設業許可を取得するメリットの第一はもちろん、軽微な工事以外の工事も受注できるようになることです。その点を含めて、建設業許可を取得することで得られるメリットについて、いくつか挙げてみましょう。
500万円以上の工事を受注できるようになる
建設業許可を受けていない建設業者は、建築一式工事では1,500万円未満、建築一式以外の工事では500万円未満(木造住宅で延べ面積150平方メートル未満)の工事しか請け負うことができません。従って、建設業許可を取得するメリットの第一は、この請け負える工事の金額に対する制限がなくなるという点です。
元請業者から何度か軽微な工事を請け負っていると、そのうち信頼性も上がり額の大きな工事を任されることも多くなります。その際、「この工事は500万円以上になるから、建設業許可を取っておいてよ」というようなことを言われて、慌てて許可が取得できるか検討に入るということも多いと思います。
建設業許可を取得すると、「この工事は受注できない」「この工事だったら受注できる」と、金額によって切り分けたり妥協したりする面倒・手間がなくなるため、仕事を取る段階でかかるストレスは、一定程度軽減されるはずです。
対外的な信用性が向上する
経営面・技術面の信用性
間接的なメリットとして大きいのは、建設業許可を取得することで対外的な信用性が大きく向上する点です。建設業許可はその要件の中に、建設業者を一定年数経営した経験のある人が含まれることや、一定の国家資格または実務経験を積んだ人が含まれることなど、経営面や技術面で一定水準以上であることを含みます。そのため、建設業許可を取得している業者というだけで、その業者は一定水準以上の経営・技術を要する業者であると判断しやすくなります。
財産面・雇用面の信用性
また建設業許可を取得すると、工事の経歴や財務状況などが希望者には閲覧可能な状態となることから、情報的にも開かれた業者として信用面が向上することにも繋がります。情報が開かれていることに加えて、建設業許可の財産的要件を満たしていることもあって、金融機関などからの融資を検討する際、対応に差が出ることにもなります。
さらに、平成24年から建設業許可を取得する業者は、原則として社会保険に加入していることを求められるようになりました。このため、許可業者であれば従業員に対する福利厚生などもしっかりなされており、いわゆるブラックな企業ではない(であろう)ことが推測可能となります。
元請業者からの仕事を受注しやすくなる
前述の信用性向上と関係しますが、近年、大手元請業者に対して下請けとして工事を出す業者についても、法令を遵守した業者であることを確認するような指導などが頻繁になされているようです。これによって、大手元請業者が下請け業者を利用する際、建設業許可を取得している業者から選択することが増えてきましたし、同様、下請け業者がさらにその下請け(孫請け)業者に工事を発注する際にも、建設業許可を要する会社であるか確認が入ることが多くなっています。
つまり、建設業許可を取得している業者であれば、一定程度の基準を満たし、法令を遵守し、社会保険も完備しているため問題が生じる可能性が低いだろうという判断です。
そのため、今後は500万円以上の工事を受注することが目的というよりも、下請けとして元請業者から工事を受注するために、建設業許可を取得しておくという目的もより強くなってくると思われます。
建設業許可業者というライセンス
以上のように、一定金額以上の工事を受注できることを中心に、信用性向上というメリットも大きい建設業許可ですが、最後に触れた社会保険への加入が原則(更新の際などにも確認が入る)となったことによって、許可を取りたいものの社会保険加入がネックとなって取得をためらう業者も多くなっています。
このことは、許可を取得できる業者が制限されるということですから、建設業許可というライセンスを所有している業者であるか否かが、これまで以上に効いてくる面も増えてくることを意味します。建設業許可を取得すれば、工事の受注贈が見込めるというのであれば、そのライセンス料のようなものと考えて、早めに社会保険加入と許可取得を行うことも、検討してみてよいのではないでしょうか。
その他、建設業許可を取得すると公共工事受注への道が開けるというメリットもありますが、ここでは省略します。